工場をIoT化するメリット|IoT化する前に知っておくべきこと
公開日:2020年03月03日
最終更新日:2024年10月30日
近年、通信技術の発達により、IOT化があらゆる分野で進んできており、工場も例外ではなくIOT化の波が押し寄せてきています。
IOT化されたモノには「スマート」という言葉がついているので、「スマート工場(IOT化された工場)」という言葉を聞くようになったのではないでしょうか。
そんな工場のIOT化について、ここでは詳しくご紹介させていただきます。
そもそもIOT化とは
IoT(Internet of Things)は、「モノのインターネット」や「モノがインターネット環境を介して人とつながる」ことですが、工場におけるIoTを簡単に表すと、「各端末からデータを収集すること」と言い換えることができます。
今世界では、「掃除機」「エアコン」「冷蔵庫」などの家電製品をWiFiに繋ぎ、スマートフォンなどの各種デバイスから状態を確認できたり、Google Homeなどのスマートスピーカーで制御をできるようになったりしてきています。
自動車業界では自動運転システム、バスなどの公共の交通機関であれば到着時間、配送倉庫であれば自動移動倉庫(Amazonの倉庫が有名)などもあります。
IoTは一般家庭やあらゆる業界で利用されていますが、今では製造業の予知保全などを行うためのデータ収集で利用されたり、在庫管理や生産管理などのあらゆる領域で利用されるようになってきています。
工場IOT化は「見える化」と「制御」ができるようになる
見える化するときに収集するデータ
「生産データ」と「設備データ」にはそれぞれ、リアルタイムデータと集計データが存在します。
まず生産データについて見てみましょう。
見える化できる生産データ
見える化できる生産データは下記の4点あり、それぞれリアルタイムデータと集計データが取れます。
- 「生産数」
- 「不良数」
- 「作業工数」
- 「生産時の設定条件や検査結果値など」
見える化できることにより、生産数と不良数と作業工数でリアルタイムの生産進捗が確認できるようになり、不良数で不良分析ができるようになります。
また、生産数と作業工数で作業効率が分析でき、生産時の設定条件や検査結果値などで生産時の情報を残して、品質確認やトレーサビリティ対応が容易にできるようになります。
見える化できる設備データ
見える化できる設備データは大きく2つあり、それぞれリアルタイムデータと集計データが取れます。
- 設備の運転/停止データ
- 振動や温度などの設備動作データ
設備の運転/停止データは、設備の稼働と停止をリアルタイムで稼働監視ができるようになり、素早く設備異常の通知ができるようになります。
また、振動や温度などの設備動作データは、設備の故障を事前に検知するため、予知保全をすることができるようになります。
制御するために必要な収集データ
製造時の環境データをリアルタイムでデータ収集することにより、そのデータに応じて自動で設備動作を制御することができるようになります。
例えば、加工設備で製品の温度がある一定の温度以上を超えないようにしたい場合、その製品の温度をリアルタイムに収集し、その温度が超えた場合に自動で設備が停止し、温度が下がったころに再度自動で動作するといった制御ができるようになります。
「見える化」による工場IOT化で得られる3大メリット
工場のIOT化により得られるメリットは数多くありますが、その中でも「生産性」「コスト」「品質」の3点において、大きなメリットをもたらします。
それぞれについてみていきましょう。
①生産性が向上する
工場のIoT化により下記3つのメリットから生産性が向上します。
- 設備停止と不良率削減による生産性向上
- 作業員の意識向上
- 生産進捗に応じた柔軟な対応
設備停止と不良率削減による生産性向上
工場設備のIot化により、予防保全により設備トラブルを回避していた場合、随時設備の状態を監視することができるようになるため、設備停止の可能性がある振動や温度上昇などを感知し、設備停止する前にメンテナンスを行うことができる予知保全が可能となります。
また、設備以上をリアルタイムで監視できるため、設備要因による不良を削減することにもなり、不良が出る場所の分析も容易に行いやすくなります。
結果、「設備停止によるリードタイムの削減」「不良率の削減」につながり、生産性の向上が期待できます。
作業員の意識向上
IoTの最大の特徴は、「状況把握がリアルタイムにできること」です。
そのため、生産進捗が目標よりも遅れているか進んでいるかをリアルタイムで知ることができ、遅れが出ている場合は生産を急ぐようになったり、作業員の意識向上につながります。
生産進捗に応じた柔軟な対応
リアルタイムで目標に対しての清算進捗が確認できるようになるので、工場責任者が目標に対してそれぞれライン進捗に合わせた対応ができるようになる。
例えば、Aラインは80%にきているBライン75%まできている、Cラインが50%まできている
②コスト削減につながる
工場のIoT化により下記2つのメリットが生まれ、結果的にコスト削減につながります。
- 不良品削減によるコスト削減
- 生産日報や作業日報、検査記録などの日報の作業工数の削減
それぞれを詳しくみていきましょう。
不良品削減によるコスト削減
生産性の向上メリットでもお伝えしたことになりますが、設備トラブルを未然に防ぐことができるようになるので、設備トラブルが要因となっていた不良品が削減できるようになります。
また、設備トラブルによる不良品が減るということは、人要因なのか原料要因なのか等の原因分析を行いやすくなるため、改善が行いやすくなります。
その結果、コスト削減につながります。
生産日報や作業日報、検査記録などの日報の作業工数の削減
エクセルや紙への手書きなどで行なっていた生産日報や検査記録を、パソコンのデータに簡単に反映できるようになるので、非生産作業である日報作業を減らすことができます。
非生産作業の工数を減らすことができれば、生産作業工数を増やすことにつながり、コスト削減だけでなく売り上げ自体を増やすことにもつながります。
③品質が向上する
品質面の大きなメリットは下記となります。
- トレーサビリティの向上
なぜトレーサビリティーの向上ができるのか、詳しくみていきましょう。
トレーサビリティの向上
加工設備の温度や回転数など設備データを定期的にIoTで収集することによって、より細かい製品の生産情報や検査情報がわかるようになるため、問題の原因追求が従来よりも細かくできるようになる。
かつ、今までは紙ベースでデータをとっていたものが、IoT化により製品の生産情報や検査情報が情報端末により簡単に検索できるようになり、より細かい情報がより早く検索できるようになる。
「制御」による工場IOT化で得られるメリット
制御を行うことで下記3つのメリットが同時に得られます。
- 省人効果
- 品質向上
- 設備トラブル削減
例えば、今までは製造時の温度や回転数などデータは、人が定期的に確認して設備を操作したり、製造記録の帳票に記録したりしていました。
しかし、それをIoTでリアルタイムに自動でデータ収集し、そのデータに応じて自動で設備動作を制御することにより、人の作業が不要になり、省人効果に繋がります。
また、より詳細な製造条件で生産できるようになり製品の品質向上や、設備に負荷を与えないように制御や設備の異常を事前に予測することにより、設備トラブルの削減にもつながります。
工場のIOT化はスモールスタートが理想
工場のIot化をするメリットをここまででたくさん知っていただけたかと思います。
しかし、これらのメリットをいきなり得ようとする場合、導入費用はそれなりに大きくなってしまい、工場内にも混乱が起こりやすくなるので、大幅な変化をするのはかえってデメリットとなってしまいます。
だからこそ工場のIoT化は、必要な箇所から必要なモノだけを少しづつ導入するスモールスタートが基本です。
ただスモールスタートを切るにも、工場の現状がどのようになっているのかを把握し、課題を少しづつ解決していく必要があります。
ではどのようにスモールスタートを切るのか、具体的な考え方をお伝えします。
IOTにおけるスモールスタートを切る際の考え方
まず、スモールスタートを成功させるには、工場内での製造活動におけるボトルネックがどこにあるのか、把握するところ始まります。
工場を運営していると様々な問題が起きると思います。
- 急な在庫の欠品で製造ができなくなることがある
- 在庫が理論値と合わないことがある
- そもそも在庫管理の運用ルールが定まっていない
- 人件費が掛かり過ぎている
- 生産性が安定しない
- 設備トラブルがたびたび起こる
- 不良品が多く出てしまう
- 品質が安定しない
これらの問題点は、各工場によって異なるはずですが、どこに問題があるのかをシッカリと把握分析することで、スモールスタートを成功させることができるようになります。
在庫に関することであれば、在庫管理システムの導入から始める必要があります、品質が安定しないといった問題であれば、なぜ品質が安定しないのかを分析して、それに見合ったシステムの導入をすることが必要になります。
また、問題はここに挙げた全てだという場合、初期導入コストが比較的安い在庫管理システムから導入することで、スモールスタートを切ることができます。
しかし、問題があるところからシステムを導入すればいいというわけではありません。
IoT化を検討した際は採算が取れるか相談するのが重要
IoT化をしたが逆に口数が増えて生産性が下がったとなっては、IoT化をした意味を感じられません。
よって、IoTのプロに、自社の状況やボトルネック、実際の作業状況などからIoT化するメリットがあるのか?もし導入した場合に想定されるデメリットは何か?をシッカリと確認することが非常に重要です。
設備トラブルに対しての予知保全システムや在庫管理システムなど様々なシステムがあり、それらを導入することで工場のIoT化を行うことは可能です。
それぞれのシステムの特徴を調べる前に、「総合的に見てスマートスタートを切るにはどこから見ていけばいいのか?」を相談するのも良いかもしれませんね。
まとめ
ここまで、工場IoTに関しての概要をお伝えしてきましたがいかがでしたでしょうか?
これからどんどんスマート工場が生まれてきて、様々なシステムが開発され、より便利で生産性を上げやすい工場が出てくるでしょう。
ライバルがIoT化を行うことで、ライバルと差をつけられてしまい、売り上げに影響が出るといったことも今後は考えられます。
いますぐIoT化を進めないにしても、自社工場をIoT化した場合は、どんなメリットとデメリットがあるのかをシッカリと把握しておくのも重要かもしれません。
工場のIoT化でお悩みの方は、初期導入コストが安いシステムを開発している株式会社ネクスタにご相談いただくことで、他のIoTシステムとは違ったメリットが出せることもあります。
お気軽にご相談ください。
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